-- WNBデュエットオカリナ --

WNBデュエットオカリナ、概説

この章ではWNBデュエットオカリナの扱い方について説明します。

ニュージーランドのウッドゥン・ボーン(WNB)工房が製作しているデュエットオカリナです。
職人のユーリは12歳の頃から一風変わった趣味を持っていました。一つは動物の骨に彫刻することで、もう一つは木で楽器を作ること。それはそのまま工房の名前の由来になりました。彼の工房はバグパイプやターバーなど珍しい楽器と、牛骨を削った真っ白なペンダント、西洋伝来のグロテスクな操り人形など、奇妙な品であふれかえっています。

WNBデュエットオカリナは、デュエットオカリナのみならず一人合奏できる笛の類の中で最高のスペックを誇ります。これがユーリ曰く「年に2,3個しか売れない」なんて、とても信じられません。職人はやっぱり作るのが仕事であって売るのは下手なんだなあとか。こんなすばらしい商材を見逃すなんて(日本を含む)世界中の楽器店は今までいったい何をやってたんだとか。いろいろ思ってしまいました。

日本では2012年末からちらほら市場に出回るようになりました。ほとんど知られていないので、まだまだ入手しやすい状況です。(2012/11/17現在)

仕様

  • 指穴の数: 左5穴、右5穴
  • 音域: 左1オクターブ+1、右1オクターブ+1
  • キー: 左F管、右C管(右の方が低音です)
  • サイズ: 23.0cm×5.06cm×2.5cm
  • 重量: 146g
  • 材質: 木(種類、木目調は工房まかせです)
  • 付属品: なし

所感

デュエットオカリナのみならず一人合奏できる笛の類の中で最高のスペックです。
音域はソラシドレミファソラシドレ。この、高い音のレまで出る、というところが「待ってました!」って感じです。音域が足りず演奏できない曲が多いデュエットオカリナにおいて、高い音のレまで出る、というのは筆舌に尽くしがたいアドバンテージです。このたった1音あるかないかで演奏できる曲の数がかなり違ってきます。音域が足りなくて他のデュエットオカリナでは演奏できなかった曲も、このオカリナなら演奏できるかもです。そうそう『千の風になって』とか吹けます。

片手で1オクターブ+1音を演奏できます。9つの音を5つの指穴で表現しますから、オクターブは近似値ですが…ピッチは極めて正確です。

なによりこのオカリナはチューニングができます。
管のお尻に刺さっている丸い棒がチューニング用の栓です。栓を引きだすとピッチが下がり、押しこむとピッチが上がります。

そもそもふつうのオカリナからしてチューニングなんてできません。コンサート会場では事前にオカリナを温めておいたりなどと気を使いますが。このオカリナならピアノで伴奏するにしても安心感が違います。

見てのとおり、オカリナというよりリコーダに近い外観です。音色もリコーダに近いです。そのへん好き嫌いが分かれるかもです。輪郭のはっきりした音色なので、2音でハモると映えますよ。

ずいぶん小さい指穴もありますけど。
細い木管に――曲率の高い円筒面に開けた小さな穴なので、指で押さえてちゃんと押さえたと分かります。そのへんはCHデュエットオカリナのような、慣れないうちは指穴をちゃんと押さえているのかどうか分からない、といった苦労はありません。

難点は強いて言えば、チューニングできる、というところでしょうか。
チューニングできる、ということは…いやでもチューニングしなければならない、ということです。2つの音がきれいに重なるようにチューニングする作業は、あまり音楽に馴染みのない楽器初心者には辛いかもしれません。

WNBデュエットオカリナ、鳴らし方

持ち方や唇の当て方など、鳴らし方について説明します。
※ ここの話はWNBデュエットオカリナ向けの内容です。

姿勢について

何事も姿勢は正しく、です。
立っても座ってもいいですから、背筋をまっすぐ伸ばしてください。背中がまるくなっていると肺や内蔵を圧迫してしまって、息を素早くたくさん吸いこめなくなります。息を吐くときも、腹筋に無理がかかって、音がふらふらしたりします。背筋はまっすぐ伸ばしてください。

持ち方

WNBデュエットオカリナは次のように持ちます。

  1. WNBデュエットオカリナの吹口に唇を当てます。
  2. 指穴が8つ開いている側が表です。眼で見える側です。
  3. 右側の4つの指穴を右手の人差指、中指、薬指、小指でふさぎます。
  4. 左側の4つの指穴を左手の人差指、中指、薬指、小指でふさぎます。
  5. 裏側にも指穴が2つあるので、両手の親指でそれぞれふさぎます。

唇の当て方

WNBデュエットオカリナはハーモニカのように左右にスライドさせながら演奏することがあります(片方の音だけ鳴らしたりします)。このようなときは、唇をかるく閉じてWNBデュエットオカリナの吹口に当てます。両方の吹口を同時に吹くときはガップリくわえます……2つの吹口が離れているので、ガップリくわえないとうまく息を吹きこむことができません。

噛みつくとオカリナに歯形がつきます。唇だけでくわえてください。

吹けばとりあえず鳴るけれど

WNBデュエットオカリナには吹口が2つありますが、最初のうちは一つだけ音を出すようにします。つまり最初はふつうのオカリナとして練習しましょうということです。ここでは試しに左側半分だけ吹きます。オカリナは吹けば鳴る笛です、とにかくぷーっと吹いてみてください。吹きながら指穴をあけたりふさいだりしてもいいですよ、どうでしょう。「こんなの簡単っ」と喜んだ人もいるでしょうし、逆に「えーなんだかつまんない音…」とすこしがっかりした人もいるかもしれません。

WNBデュエットオカリナは、オカリナのグレードでいえば中程度でしょうか。
最高グレードのオカリナであれば、誰がどのように吹いてもすばらしくきれいな音色で鳴ります。しかしこのグレードだと、きれいな音・気持ちよく聴ける音で演奏するためにはちょっとコツがいるというか、いくらか練習が必要です。

付け刃でとりあえずきれいっぽい音を出す方法について 『オカリナの基本』 の章で説明しています。そちらを参考にしてください。

WNBデュエットオカリナ、運指1

運指について説明します。
※ ここの話はWNBデュエットオカリナ向けの内容です。

運指表の見方

WNBデュエットオカリナの運指は以下のような図で表します。
これはオカリナを持って鏡の前に立ったときの、鏡に映ったオカリナを表しています。

  • 向かって右側が右手の指穴
  • 向かって左側が左手の指穴

黒丸は指穴を塞ぎます、白丸は指穴を開けます。
それとWNBデュエットオカリナは同時に2つの音を出せますが、いつも2つの音を出すわけではありません。片側だけ吹く場合もあります。片側だけ吹く場合は、吹かない側の指穴をグレイで描いたり、いっそ何も描かなかったりします。

WNBデュエットオカリナ、運指2

ドレミファソラシドの運指です。
※ ここの話はWNBデュエットオカリナ向けの内容です。

ドレミファソラシドの運指

WNBデュエットオカリナのドレミファソラシドの運指です。
左手側は下から順にドレミファソラシドレ、右手側は下から順に低いソの音からソラシドレミファソラです。指穴はパッ開けてパッと塞ぐようにしてください、中途半端だと変な音がします。一つ一つの音をきちんと区切るとハキハキしたきれいな音になります。

5穴オカリナの運指は覚えにくい

どうでしょうか。ふつうのオカリナやリコーダーと比べて運指が覚えにくいと思ったかもしれません。5つしかない指穴の組みあわせで9つの音を出すのですから、それは仕方ないことです。(そのおかげで片手だけで1オクターブ+1音も演奏できるんですけど。)
これは…長く吹いていればそのうち必ず覚えます、信じてください。たかだか9種類のパターンでしょう、九九を覚えるよりずっと簡単なはずですよ。

しいて言えば、よく使う音から覚えるといいです。

  1. まずドとソの音を覚える
  2. 次にラの音を覚える。「ラの音は”ソより高い音”」と覚える
  3. それからミとレの音を覚える。「ミとレの音は”ソより低い音”」と覚える
  4. 最後に「”残り”がファとシの音」と覚える

ぜんぶの指穴を開けるときは

WNBデュエットオカリナの使い方からして、指穴をぜんぶ開けて両手放しになるというケースは少ないのですが。ぜんぶの指穴を開けるときは、仕方ないので両手の小指と親指でオカリナを支えます。オカリナから指を離すように指穴を開けるのではなく、指を横にスライドするようにして指穴を開けます。そうするとオカリナを支えたまま指穴を開けることができます。

両手放しになった瞬間にあわてて支えるのではなく、そろそろ両手放しになる…あたりで、前もって支えておくのがよいです。

WNBデュエットオカリナ、運指3

クロマチック(12音階)の運指です。
※ ここの話はWNBデュエットオカリナ向けの内容です。

クロマチックの運指

半音を含む、WNBデュエットオカリナで表現できる全ての音の運指です。
見にくければ、図をクリックして拡大表示して見てください。
グレイアウトしている音は出せません。


ドレミファソラシドしか使わない

でも……ほとんどドレミファソラシドしか使わないですよ。
なんだかんだ言ってWNBデュエットオカリナは、全体の音域が狭いです。これで曲を演奏しようとすると、結局いつも同じヘ長調で演奏するしかありません★1 。他の調で演奏しようとすると、曲がオカリナの音域に収まりきれないですから。

WNBデュエットオカリナで曲を演奏するときは、どんな調の曲もみんなヘ長調に移調して演奏することになります。となるとドレミファソラシド以外の音ってほとんど使わないです。

WNBデュエットオカリナ向けの説明はこれで終わり

これでWNBデュエットオカリナ向けの説明は終わりです。
あと、基本的な演奏方法から一人合奏する方法まで一とおり目をとおして、WNBデュエットオカリナ演奏を楽しんでいただければ幸いです。

★1 いつも同じヘ長調で演奏する
WNBデュエットオカリナで演奏しやすい調は、他にハ長調と変ロ長調があります。これらの運指については自分で考えてください。「これらの調で演奏したい」と望むような人なら当然、音階に使う音も把握しているのでしょう。ならば私の助言も不要です。